発売日から遅れること3日(事前予約をし忘れてしまった)、1月10日のネット注文で、6日後の1月16日にようやく届いた。本当にCDが買いにくい世の中になったものだ。
奥田民生「あまりもの」は、2018年の「カンタンカンタビレ」以来、約8年ぶり、2021年以降のデジタルリリースされた楽曲の新録に加え、新曲も収録された、久しぶりのソロアルバムである。
開封して、一聴。どこか懐かしさを感じた。この懐かしさの正体はなんだろう。
お馴染みのMTR&Yによるバンドサウンド、スカパラホーンズや所ジョージなどとの豪華な共演、一人多重録音、紙コップを打ち付ける音でビートを刻むといった遊び心のあるアレンジ。昨今、新しい才能が台頭し続けるJ-POPとはよそに、変わらず独自の路線を貫いている。
なかでも歌詞には、「これぞOT」という要素が詰まっていた。
その歌詞は、言葉少なで、時に主語がなく、あえて対象の特定の描写を避ける表現。だがそれが想像力を掻き立てる。100人の人間が聴いたら、100通りの解釈が生まれそうな歌詞だ。
OTの歌詞の特徴は、言葉の文章として伝える機能を捨て、言葉を音の一つとして響かせるところにある。音として配置する言葉なので、もはや文章として伝える必要がない。例えば、「うちょうてん」という曲の歌詞の一説。
俺は匠 俺は専門家
「匠」・「専門家」とタイトルの「うちょうてん」の関連が初見では全く繋がってこない。だが、ここに演奏と歌が合わさると、なんか楽しげで前向きな感じは伝わってくる。
※後で「有頂天」という言葉の意味を調べてみたところ、「うまくいった喜びで夢中になっていること」(一般的にはこの意味で解釈されることが多いと思う)の他に、仏教的な意味で「三界(さんがい)のうちの最上位の天。また、形あるものの世界の最高の所。」という意味があるとのこと。なるほど、「うちょうてん」は仏教の歌なのだ・・・!
OTの歌詞は一節だけでもここまで想像させてくれる。リスナーの想像力のエクササイズに一役買ってくれているのである。
とかく私たちは今、言葉の正確性が求められる世界を生きている。
発する言葉に主語がなければ誤解を生むし、意味が間違っていれば訂正を求められ、言葉が足りなければ炎上する。少ない言葉から想像を膨らませるゆとりを見失っていたような気がする。懐かしさの正体はこれだったのか。
このCDの収録時間は約30分。「ニュアンス」と、「文脈」と、「雰囲気」について考えさせてくれる30分を与えてくれているようだった。

よくよく収録曲の曲順について考えてみると、「獲物」を人にあげる「匠」の話が出てくる「うちょうてん」に始まり、「何か」を作って「道行く者」に配っている「君」を描いた「あまりもの」。今回のアルバムは「与える男」に始まり、「与える男」で終わっている。


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