アルバム「OoochieKoochie」のクレジットを眺める

CD

水と油って、混ざるんだなぁ。

2025年6月にリリースされた、奥田民生・吉川晃司によるスペシャルユニットOoochieKoochieのアルバム「OoochieKoochie」。
ゴリゴリのロックギターが響く「おちこち」、歌詞が全編広島弁で、元々が持つ身近な言葉である方言を新鮮に聴かせる「ショーラー」、ロック界の大御所が組んで起こした化学変化がまさかのディスコナンバー「GOLD」と、「歌」・「演奏」・「アレンジ」においてバラエティーに富んだすごいアルバムが出た。

今回の投稿では、アルバム「OoochieKoochie」のクレジットを眺め、いかにしてこんなにバラエティ豊富なアルバムになったのかを想像する回にしたいと思う。

痛恨のミス

まず、このアルバムのクレジットを眺める上で押さえておかなければならない情報がある。

アルバムリリース直後、SNSを通じて、クレジット誤表記についてのお詫びが発表された。訂正内容は下記のとおり。

誤)
 M-1,5,9,10
 Music & Lyrics by Ooochie Koochie
 M-2,3,4
 Music by Koji Kikkawa Lyrics by Tamio Okuda

 正)
 M-1,2,9,10
 Music & Lyrics by Ooochie Koochie
 M-3,4,5
 Music by Koji Kikkawa Lyrics by Tamio Okuda

作詞・作曲者が誤表記という痛恨のミス・・・。

奥田・吉川の作風がどのように楽曲に作用しているのかを考える上で重要な情報を誤表記してしまっている。かつて、マイルス・ディビスの「Kind of blue」のジャケットが、メーカーのミスによって収録曲を誤ったロットが存在することがのちに語り草になっているが、フィジカルメディアの生産がめっきり少なくなってしまった今の時代には、やり直しの効かない痛恨のミスといえるだろう。

ただ、僕はユニコーンの制作スタイルを映像で見てきたが、曲はそれぞれのメンバーが持ち寄るが、別のメンバーの提案によって曲が変わったり、詞は誰がというわけでなくハマる言葉を当てはめていく、作詞・作曲のクレジットは後付けに近い、といった制作スタイルがOoochie Koochieの現場でも踏襲されているのだとしたら、どちらが作詞で、どちらが作曲をしたか、という境界線が曖昧になっているのかもしれない。
この際、全曲「作詞・作曲:Ooochie Koochie」でもいいような気もする。

下記、備忘のために訂正後の作詞・作曲者を整理しておく。

01. おちこち
作詞・作曲:Ooochie Koochie
02. ショーラー
作詞・作曲:Ooochie Koochie
03. GOLD
作詞:奥田民生 作曲:吉川晃司
04. マンデー
作詞:奥田民生 作曲:吉川晃司
05. Do The Shuffle
作詞:奥田民生 作曲:吉川晃司
06. 片恋ハニー
作詞:吉川晃司 作曲:奥田民生
07. GIBSON MAN
作詞:吉川晃司 作曲:奥田民生
08. リトルボーイズ
作詞:吉川晃司 作曲:奥田民生
09. Three Arrows
作詞・作曲:Ooochie Koochie
10. OK
作詞・作曲:Ooochie Koochie

バンドメンバー

ドラム:湊雅史 
奥田民生のバンド「MTR &Y」のドラマーとして馴染みがある。吉川晃司のバンドにも参加している。2023年の奥田民生「ラビットツアー」の時期は、奥田と吉川のコンサートを同時期にこなしていたという。その縁があってのことか、後の2023年アラバキでの奥田・吉川の共演につながっていく。


ベース:大神田智彦
星野源、Superfly、KREVAのレコーディングに参加している。奥田・吉川ともにこれまで関連は見当たらなかった。流石にここには小原礼はいない。


キーボード:斎藤有太
湊雅史と同じく「MTR &Y」でキーボードを弾いている。 奥田民生ソロデビュー時からバンドで参加している奥田御用達のメンバーである。


シンセサイザー:ホッピー神山 
吉川晃司のアレンジャーを務めている。


コーラス:Chloe Kibble(クロエ・キブル)   
YOASOBIやSEKAI NO OWARIのバックコーラスを務めている。 
吉川のツアーに参加していた。


コーラス:mimiko
Chloe Kibbleとデュオユニット”Jasmine High”を組んで活動している。


シンセサイザー:奥野真哉  
ミクスチャー・ロック・バンド“ソウル・フラワー・ユニオン”のメンバー。COMPLEXにも参加。


ドラム:坂東慧  
T-SQUAREのメンバー。吉川晃司・COMPLEXにも参加。


バグパイプ:十亀正司  
東京交響楽団のクラリネット奏者だった人。

裏方で関わっている人たち

アレンジャー:菅原弘明
吉川晃司楽曲の作曲を手掛けている人。
アレンジは6曲目の「片恋ハニー」のみ斎藤有太が手掛けている。

エンジニア:坂元達也・宮島哲博 
エンジニアには、吉川晃司・佐野元春の作品にも参加している坂元達也と、奥田民生御用達の宮島哲博の2大巨頭が構えている。

以上、アルバム「OoochieKoochie」は、単なるロック界の大御所の融合、というわけではなく、バンドメンバーや裏方など、2人を取り巻いているチームが融合した、ゴージャスなアルバムであることが言えるだろう。

これってどういう意味?

クレジットの中には、「これってどいう意味?」という記載があった。

Tamio Okuda on Vocal and Guitar (R:1,2,3,4,5,10 / L:1,6,7,8,9)
Koji Kikkawa on Vocal and Guitar (R:6,7,8,9 / L:2,3,4,5,10 / C:1)

どういう意味だろう?
・C=センター=真ん中
・L=レフト=左側
・R=ライト=右側
ということだろうか。楽曲によって、奥田・吉川の声とギターが左右のチャンネルに分かれている?
だとすると、1曲目「おちこち」で民生がLR、吉川がCとなっている違いはなんだろう?

実際に聞いてみたが、奥田の「LR」と、吉川の「C」に違いは分からず、どちらも左右から聴こえた。

以上、2025年の注目度抜群のアルバム「Ooochie Koochie」のクレジットを眺めてきた。
このアルバムは、大御所ロックシンガーの「2人」が融合した、というだけでなく、これまでの音楽人生の中で2人を取り巻いてきた「2つのチーム」が混ざり合った、最強の布陣で制作されたアルバムだということになる。
これはもう、「祭り」だ。祭りならば純粋に、屈託なく楽しもう。

ライブには行けねぇけど。


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