サザンオールスターズ/SAKURA


最新アルバム「Thank you so much」を聴いた。
めちゃめちゃ良かった。
とても年齢70歳を迎えようとしている人たちが作る音とは思えない。自らのルーツである昭和のなつかしさを匂わせながらも、まだまだ新しい音楽を世の中に提示している。

ライトなサザンファンからしてみれば、サザンといえば、どうしてもベストアルバムになってしまう。まもなくデビュー50周年をという長いキャリアであるだけに、これは致し方ないことだ。
ベストアルバムだけで捉えるサザンのイメージは「夏、海」となってしまうこともまた、致し方ない。
でも、それでは勿体無いのだと、「Thank you so much」を聴いて思った。オリジナルアルバムも聴かないと、本当の意味でサザンの新譜リリースという「国民的行事」を楽しんでいるとはいえない。

僕が初めて触れたサザンのオリジナルアルバムは、1998年10月にリリースされた「SAKURA」である。
この年、デビュー20周年を記念して、6月には2枚組ベストアルバム「海のYeah!!」をリリース。僕はサザン20周年の波に乗るように、6月に「海のYeah!!」、10月に「SAKURA」を購入した。
今考えてみると、このリリース順は絶妙だった。「海のYeah!!」では、パブリックイメージに沿った「陽」のサザンをライトなリスナーに見せ、「やっぱりサザンは夏だよね」と思わせたその秋に、「SAKURA」をリリースしたのである。
結果として「陰」のサザンを「海のYeah!!」との対比としてリスナーに聴かせることになった。

『SAKURA』概観

なんて暗くてヘビーなアルバムだろう。
オープニングの「NO-NO-YEAH / GO-GO-YEAH」、2曲目の「YARLEN SHUFFLE 〜子羊達へのレクイエム〜」と、閉塞感のある重たい曲が続く。そこにダメ押しの「マイ フェラ レディ」である。
リリース年が1998年も終わりに差し掛かった時期であることから、「爆笑アイランド」や「私の世紀末カルテ」など、どことなく世紀末感を漂わせた楽曲の比率が高い。
中には「LOVE AFFAIR 〜秘密のデート〜」やエンディング曲「素敵な夢を叶えましょう」など、今でもライブなどで聴かれるキラーチューンも入っている。
世紀末の鬱屈した社会で生きる人、世界の情勢、恋愛、失恋などを多角的に描かれた作品だ。

『SAKURA』の楽しみ方

音に絡む言葉(詩)を体感できるアルバムである。
1回目は歌詞カードを見ずに聴いてサウンドを楽しむ、2回目に歌詞カードを見ながら聴き、曲に当てはめられた言葉の絶妙さを味わう、3回目に歌詞を入れた状態でもう1回聴く、これを繰り返すといいかもしれない。
日本語の歌詞を確信犯的に英語やフランス語に聞こえるように空耳を誘発させる歌詞がすごい。
特に「マイフェラレディ」は、曲の始まりから終わりまで、今時、音読するにも憚られる卑猥な日本語の歌詞が展開されている。にも関わらず、曲が乗ることによってフランス語の歌に聴こえる作りになっている。
このテクニックには、歌詞の卑猥さに抱くネガティブな感想をいとも簡単に凌駕してしまう。この味わいは、SNS世代にはわかるまい・・・。

日本語の歌詞を英語のように聴かせるテクニックは、現在のCreepy Nutsや、Adoにも継承されている。その先駆けとしてこの時代に「言葉を音にする」という試みをしていたサザンはすごい。

そういうわけで、あまり真面目にサザンを聴いていないリスナーによる、「SAKURA」の感想を綴った。今からでもサザンのオリジナルアルバムを一から聴き返そうと思う。

また一つ、楽しみが増えた。


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