チャットモンチーのキラーチューンってなんだろう?
おそらく、「シャングリラ」と答える人が多いだろう。
では、チャットモンチーのアルバム最高傑作ってなんだろう?
僕は断然、「告白」だと思っている。このアルバムには「シャングリラ」は収録されていない。
「告白」は、名曲「シャングリラ」が収録された2ndアルバム「生命力」に続くチャットモンチーの3rdアルバムである。
時期的に、バンドが成熟期を迎え、実力・知名度共にピークに達していて、最高に脂がのった名盤だ。
アルバムのオープニング、「8cmのピンヒール」のイントロからしてカッコ良すぎる。3人が一斉にセッションを始め、このアルバムの期待値を最高潮にあげてくれる。特に橋本絵莉子のギターが、激しくメロディアスで、かっこよさの中になんか切なさを感じる。
「8cmのピンヒール」が終わると間髪入れずに2曲目の「ヒラヒラヒラク秘密ノ扉」へつながっていく。ライブなら2曲目で盛り上がりが最高潮に達する感じ。この時点でもう、どんなに忙しくてもこのアルバムの再生を途中で止める気なんてなくなる。このままエンディングまでお付き合い願いたいものだ。
2曲目「ヒラヒラヒラク秘密ノ扉」は、ギター、ベース、ドラムだけでなく、「言葉」がハイテンションなビートを生み出している。
・「ヒラヒラと開いて」
・「サクサクと咲く」
・「ビリビリ破れた」
・「ムザムザと辿る」
これでもかと言うほど韻を踏んで言葉でビートを刻んでいる。
日本語ロックのパイオニア的存在であるはっぴぃえんどの血がここにも流れている。
4曲目の「染まるよ」はチャットモンチーの中で一番好きな曲だ。
この曲も歌詞が音楽にのってすごく耳心地がいい。
いつだって そばにいたかった
分かりたかった 満たしたかった
この「た」が繰り返される一節が、文章として読んでもいいし、音楽として聞いてもいい響きになる。チャットモンチーの楽曲の詩はメンバー全員が書いているが、みんな音をすごく大切にしてりるんだなと思う。
この曲の一番言好きなところは、大サビに差し掛かる時の転調の仕方である。この曲は、「でも もう いら ない」のたった8文字で転調し、曲のピークを迎える。
転調って普通、Aメロ→Bメロ→サビの後に間奏を挟んで差し込まれるのが一般的だと思うけど、この曲の「でも もう いら ない」でうわっと涙が出てしまうほどの展開になるのがすごいと思う。
「エンディングまでお付き合い願いたい」と言っておきながら、ここまででまだ4曲。もうアルバム1枚を聴き終えた満足感がある。
このアルバムは二重構造になっていて、第1部がここで終わった感じがする。捉え方は様々だが、「染まるよ」に続く5曲目「CAT WALK」が第2部のオープニングであるかのように聞こえる。
そして、11曲目「風吹けば恋」でアルバムはエンディングに向かっていき、最後は「やさしさ」でメロウに終わる。
今、聴いても起承転結の構成が素晴らしく、テンション・喜怒哀楽の順番といい、最後の納め方といい、さすがライブバンドという感じがする。いや、ライブバンドの中でもこんなに秀逸な構成を組むバンドがいるだろうか。
このアルバムがリリースされた2009年当時はすでにCDの売上が下火になり、ベストアルバムがチャートを席巻していた。オリジナルアルバムを「芸術作品」と捉え、崇めてきた僕としては、心の「渇き」がある時期だった。
「告白」は、その当時の心の「渇き」を潤してくれた最高傑作だと思う。間違いなく。