まず、僕はレッドツェッペリンはあまり詳しくないということはお伝えしておきたい。
それでも、動画サイトを通じて流れてきたスポットには、並々ならぬ「引き」を感じていた。1960年代のイギリスロックが好きだからだ。
客席は平日のレイトショーにも関わらずちらほら埋まっており、客層は僕より一世代の上、大体50〜60代ぐらいの年代の人が多かった。
映画はツェッペリンに詳しくない僕が観ても十分楽しめる内容だった。ツェッペリン初期の音楽とメンバーのインタビューに、メンバーが影響を受けて音楽を振り返りながらアメリカ・イギリス史も辿っていくという、NHKの「映像の世紀バタフライエフェクト」を見ている感じに近かった。
IMAXでの上映ということもあり、古い映像にも関わらず音質に迫力があっって、見応え・聴き応えがある映画だった。
この映画をきっかけに改めてレッドツェッペリンを聴いてみようと思えた。
映画を観ながら、「なんで僕はツェッペリンを聴いてこなかったのかな」というようなことを考えていた。同時期にビートルズ・ローリングストーンズ・フーは聴いてきたけどなんでかツェッペリンは僕の音楽遍歴からはすり抜けていった。
この映画を観てなんとなくわかった気がする。
ツェッペリンが最も売れていた頃の音楽のイメージとビジュアルが僕の感覚と合わなそうだと思っていなのだ。聴かず嫌いだったんだな。
音楽だけを聴いていると、シャウトと激しい演奏のイメージしかなかった。劇中に出てくる、ローリングストーン誌によるデビュー直後のツェッペリン評「聴くものは限定されるであろう」という評価は、音楽だけを聴いていれば僕も納得感はある。
でも、この映画を観て聴くツェッペリンは、バンドの人物像や背景が音楽に重なってくることにより、映画を見る前に聴いていたツェッペリンとはまた聴こえ方が変わってくる。ロバート・プラントのあの激しいシャウトにはあんな理由があったのか、と思うと聴き方も変わってくる。
改めて1stアルバム「Led Zeppelin」を聴いてみた。
映画の中でフックとして流れていた「Good times bad times」に始まり、最後まで曲がシームレスにつながっていく構成。コンセプトアルバムのようだ。コンセプトアルバムといえば1967年のビートルズのサージェント・ペパーズが起源であり、基準だと思うがその流れが汲まれているのだろう。
そして1曲1曲が、アメリカのバーにいる雰囲気があってかっこいいアルバムだった。
音楽はあくまで曲を聴いた「感じ」が重要で、それ以外の情報は必要ないと思っていたが、この映画を観て、ミュージシャンのバックボーン(人物像や歴史)を知ることは、ロックをより深く味わうためには必要なことなのだと考えさせられるきっかけとなった。
レッドツェッペリンに興味のなかった人間に1stアルバムを聴かせるきっかけを作ったこの映画、ツェッペリンが好きな人にはすごく刺さるだろうし、そうでない人でも十分に楽しめたので、観てない人はこの機会に是非。

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