J-POPの叡智が結集した一枚
2006年3月8日リリース。
2005年3月30日リリース「リルラ リルハ」が爆発的にヒットしてから実に1年経過しての満を持してのリリースだった。
楽曲提供に奥田民生、岸田繁(くるり)、mito(クラムボン)など、参加ミュージシャンにクハラカズユキ、恒岡章、大森はじめ (東京スカパラダイスオーケストラ)など、名だたるミュージシャンがバックに構え、当時のJ-POPの叡智が結集した1枚と言える。

大ヒット曲「リルラ リルハ」、奥田民生の楽曲に木村カエラの独特な言語感覚による歌詞が繰り出される「BEAT」、隠れた名曲「Dancing now」の他、POPで明るいイメージから意外性を感じる暗くて内省的な曲まで、木村カエラらの今後の方向性も垣間見えたアルバムだ。
「リルラ リルハ」の破壊力
オープニングはキラーチューンの「リルラ リルハ」で始まる。
「リルラ リルハ」を初めて聴いた時、「次のアルバムは絶対に買うぞ」と思ったほどに購買動機に直結した曲である。
イントロのギターと合わせて乗ってくるドラムの音がかっこいい。
この曲でドラムを叩いているのはクハラカズユキ (ex.THEE MICHELE GUN ELEPHANT)だったのは最近知ったことだ。
木村カエラの歌詞も素晴らしい。「real life real heart」を「リルラ リルハ」とPOPで可愛く変換し、この世に存在しない言葉を生み出すセンスに、日本ロック界のニューヒロイン誕生を感じた。
奥田民生との夢のコラボ
「リルラ リルハ」を初めて聴いた当時、木村カエラの歌詞は、奥田民生の曲が合いそうだな、と勝手に思っていた。
その矢先の2005年10月5日、それは「BEAT」で実現した。これは嬉しかった。近年、作文みたいな、感情を押し付けてくるような歌詞がなぜかヒットしがちだった当時のJ-POPに、短い言葉で楽曲に寄り添い、音楽として機能する言葉を繰り出すロックがこの世にもっと広がって欲しいと思った。
ちなみに、「BEAT」は2018年に奥田民生がセルフカバー。
全てのパートを自分で録音し、ドラムのシンバルの音を折りたたみ傘の袋を擦る音で録音する驚きのアレンジを見せてくれている。

意外に暗い曲もある
明るくポップなヒット曲を連発していた2005年の木村カエラだったが、そのイメージとは違う、暗くて内省的な曲も収録されていた。「Deep Blue Sky」である。
シンセサイザーによるエレクトロな音が印象的に響き、本当はこういう路線もやりたいのかなという意思を感じる。キラーチューンと呼べる破壊力はないものの、ライブの中盤に適していそうなこの曲に、アーティストの意外性とアルバム全体のバランスを中和させるこの曲は、時間を隔てた今聴いてみて耳に止まる曲だった。
隠れた名曲「Dancing now」
これは隠れた名曲と言えるだろう。
くるりの岸田繁による作曲ですごくキャッチなメロディーだ。あまり有名な曲ではないと思うが、ふとした時にラジオでかかったり、ライブで選曲されたりすると、「何この曲?」となりそうな印象を残す。曲のつながり次第ではDJでかけるのはありかもしれない。
まとめ
今回は木村カエラのアルバム「Circle」を今更レビューしてきた。
アルバム全体としては、オープニングの「リルラ リルハ」でピークを迎えてしまった点が唯一残念ではある。この曲の破壊力からすると、1曲目かエンディング以外は考えられないことはわからないでもない。
ただ、当時のJ-POPの叡智が結集し、自身が2005年の1年間で積み上げたPOPなイメージをいい意味で裏切ってくれる暗くて内省的な曲が収録されたりと、ブレイクした年のまとめであると同時に、その後の方向性を示したという点は、今更聴いていてだが感じられた。
個人的には木村カエラのアルバムの中でTOP3に入る好きなアルバムだ。

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