2024年8月に、こちらのコンサートを観覧した話は以前にも投稿している。
https://yasushi-record.blog/【ネタバレ注意】「mr-children-tour-2024-miss-you-arena-tour」に行ってきた/
今回は、先日6月25日に円盤化されリリースされた、Mr.Children『miss you tour』の、特に2枚目の2023年〜2024年にかけて行われたホールツアーを見た感想を書いていく。
僕はホールツアーにはチケットを応募したが残念なことに当選しなかった。ミスチルクラスのアーティストパワーに対してホールのキャパとなれば、僕と同じ思うをしている人も多いだろう。それぐらい、ホールの距離感でミスチルを見るのは貴重な経験だ。
ちなみに僕は、2002年、仙台サンプラザホールで行われるはずだった「WONEDERFUL WORLD」のツアーには当選したことがある。だが、直前でvo.櫻井さんの病気が発覚し、ツアーは中止に。幻のプラチナチケットになってしまった。
余談はこの辺にしておいて、Blu-ray2枚目(時系列的にはこちらから見る方が正しいだろう)を初見で見てメモをとったトピックをベースに語っていく。
初見で見てとったメモはこちら。
U2やってんなぁ
オープニングの映像は、白いライトの照らされたステージにメンバーのシルエットだけが見える構図。
もう確信犯だ。
これはU2「Joshua tree」のオープニングで、「Where the streets have no name」のイントロと共に真っ赤なライトに逆光でU2メンバーのシルエットだけが見えるという演出をオマージュしている。
◼️U2「Joshua tree」
◼️Mr.Children「miss you」
櫻井さんのギターを聴かせるツアーだった
アリーナで生でコンサートを観ていた時は全く気づかなかったことだが、改めて映像を見て、今回のツアーは櫻井さんのアコギの音色を聴かせるツアーだったんだなと思う。
僕はボーカリストが弾くギターが好きで、歌への情熱をそのままギターの音色に変換している感じがいい。櫻井さんが弾くギターもその中の一つで、力強いストロークがかっこいい(真似したい)。
そして今回特に目を引いたのは、櫻井さんが弾くアコギである。
ホールツアー冒頭で「Birthday」のイントロを弾くギターの音色がいい。
そういえばアリーナツアーで「未完」を弾くアコギも印象的だった。「未完」をライブの場で、アコギで弾くというのは実は初めての事だ。「未完」を初めてライブでお披露目したアリーナツアー「Refrection」や、スタジアムツアー「未完」でも、あのイントロのリフはリリース音源とは異なり、テレキャスター(エレキ)での演奏だった。
なんとなく見ていても、今回の櫻井さんはエレキよりもアコギを抱えている時間が長かったなと感じる。それほど強く印象に残った。
コロナ禍を経て初の声出しOKは感慨深い
1曲目の「Birthday」の間奏でコロナ後初めて観客の声が聞けたところは感慨深かった。
これは、リアルにコロナ禍を経験した、同じ時代を生きる人間だから感じられる感慨だ。
この映像、歴史を経て遙か未来に見る人にはどう映るんだろうとふと思った。
「コロナを経ての初めての声出し」という背景がわからないと、普通のコールアンドレスポンスにしか見えないだろう。そう考えると、過去に数多残されている様々なアーティストのライブ映像の背景が解れば、映っている映像の意図をより深く楽しめそうだなと思った。
この「Birthday」の観衆による声出しも、後に語り草となる歴史的映像になりそうだ。
あれ? 山本拓夫がいる
Blu-rayの1枚目は大阪城ホール、2枚目には大阪フェスティバルホールの模様がそれぞれ収録されているが、どちらにもサックスプレーヤーとして山本拓夫が出演している。
山本拓夫といえば、サザン御用達、BankBandのバックも務めるイケおじサックスプレーヤーだ。僕が生で観れたのは、2007年、名取スポーツパークで行われた「HOME -in the field-」と、2012年、みちのく森の湖畔公園で行われたap bank fesなどで見ることができたが、「miss you」の仙台公演にはいなかった(と思う。間違ってたらごめんなさい。いたらぜ絶対に気づいていたはず)。
スケジュールNGだったのかな。仙台公演でも聴きたかった。
ミスチル大阪好きなんだなー
ミスチルの映像化作品は、大阪で撮影されることが多い。
2000年代までは、日産スタジアムや東京ドームなど、首都圏の映像が多かったが、2011年の「SENSE -in the field-」以降は、長居スタジアムや、京セラドーム大阪が多かった。特に「POPSAURUS」や、「半世紀のエントランス」など、自身にとっても大事な周年ライブほど収録地に大阪を選ぶことが多い。
その理由が本編でも語られていたが、「大阪のお客さんのリアクションがいい」のだとか。僕は東北開催のライブしか観たことはないが、いつだったかのライブでは「東北のお客さんはまったりしている」というフィードバックをいただいたことがある。
僕としては、ららアリーナのこけら落とし公演の円盤化を期待していたが。
Fifty’s map、10代を思い出す
「Fifty’s map ~おとなの地図」を聴いている時、不思議な感覚に襲われた。今より純粋な気持ちで音楽を聴いていた時の瑞々しい感覚だ。
この感覚はなんだろうと振り返ってみると、15歳の時に聴いた「終わりなき旅」の時の感覚に近いのかなと思う。
僕も40代になり、音楽は聴くけれども、そのメッセージや歌詞に心を動かされることはなくなった。自分より若い世代の「頑張れ、負けんな」という歌詞には一向に聴く耳を持たなくなっている。
けれども、現在50代のミスチルが歌う「Fifty’s map ~おとなの地図」を40代の僕が聴いた時、当時20代後半のミスチルが10代の頃の僕の心を動かした「終わりなき旅」が重なり、何か懐かしさを覚えた。
人生の一番輝く時期は10代〜20代となりがちだが、この国のの人口ピラミッドが逆三角形になっているのだから、日本を代表するロックバンドMr.Childrenが、今、こういう応援歌を作るということは、さすが「今」という時代を捉えているなと思う。
Dolby Digitalじゃない
オーディオ好きの僕としては大事件と言える。
ミスチルは、「TOUR 2005 “I LOVE U” ~FINAL IN TOKYO DOME~」以降、映像化したライブ映像のほとんどはDolby Digital5.1サラウンドの仕様が施されていた。これは、端的にいえば、スピーカー5個とサブウーファーがあれば、家庭でも映画館のような音声が再現できるというものだ。例えばライブビデオの場合は、観る人から前側のスピーカーからは音楽、後ろ側のスピーカーからは音楽の反響音や客席の歓声などが出力される。
ミスチルはこれまで、時代ごとに音楽ソフト事情をリードしてきた存在だと思う。DVDが普及し始めた時はいち早くDVD形態でもリリースしてきたし、BDの時もそうだ。そのミスチルが、映像作品にDolby Digitalをつけないという判断をした。5つのスピーカーでライブ映像を観る人類は、ついに僕だけになったのか(嘘)。
僕が考えるに、これには大きく2つの理由があると思っている。
1つ目は、「ステレオ音楽はやっぱり2つのスピーカーで聴くべきだよね」という考えに回帰した可能性だ。
ミスチル以外のアーティストで映像化作品にDolby Digitalをつけてこなかったアーティストもたくさんいる。その意図は定かではないが(あるいは予算的な問題もあるのかもしれないが)、音にこだわる職人肌のアーティストほどリニアPCM一択のイメージがある。
僕のユーザーとしての感想でもあるのだが、ここ数年は、「音楽ビデオにに5.1サラウンドは適切ではないのではないか」と思い始めている。5.1サラウンドと2chを聴き比べると、2chの方が2つのスピーカーから出力される音に迫力がある。5.1サラウンドだと、音楽と反響と歓声がスピーカーごとに分担されているため、肝心の音楽の音の迫力が気持ち半減している気がするのだ。
出力を2chに絞った背景には、より音にこだわった結果かもしれない。
2つ目は、「ユーザーの視聴環境の変化」があると思う。これが大きいと思う。
これを読んでいる皆さんは、普段、どんな環境で音楽を聴いているだろうか。
僕の周りでも、「CDプレーヤーすら持っていない」という人が増えていることを実感しているし、そもそもスピーカーを5つも6つも部屋に設置す人なんて今や少数派であろう。
このように、最先端の音楽ソフト事情をリードしてきたミスチルがDolby Digitalをやめた、という事件は、今後の音楽映像作品にも影響を与えそうな気がする。
またミスチルは今回、アリーナツアーの映像をYouTubeで先行公開するという試みも行っており、今後、映像をどういう媒体でリリースすれば多くの人に届くのかを模索している段階であることが想像できる。
Blu-ray時代の終焉が近いているのかもしれない。
Dolby Digitalの件で、かなり長文を書いてしまった。
以上、Mr.Children の「miss you LIVE」について、僕の視点から感じた感想を書き綴ってきた。観ていて気づいたことを散文的に書いたので、まとまりのない文章になってしまったが、ジャケットの異常な大きさとか、Dolby Digitalを辞めたこととか、積極的なYouTubeの活用であるとか、時代の変わり目に何をどう見せていくのかがかなり検討されたことが窺える一枚だった。
もしかしたら、ミスチルがBlu-rayをリリースするのはこれが最後になるのかもしれない。


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