THE BEATLES/ABBEY ROADを各メディアで聴き比べ


僕の手元には今、「Abbey road」のCD(2009年にデジタルリマスターで再発されたもの)と、レコードがある。

Abbey roadの最新版は現時点で、2019年に発売された50周年リミックスがあり、こちらはサブスクで聴くことができる。今、最も手軽に聴かれている「Abbey road」はこちらではないだろうか。

ところが、50周年リミックスはネット上で、「各パートの音がクリアに聴こえる」との高評価の一方、「長年聴いてきたAbbey roadじゃない」と言った否定的な意見もあり、評価は賛否に分かれているようだ。

そこで、今更ではあるが(棚からたまたま2009年リマスター盤を取り出したこのタイミングで)、今回はこの3つの形態を聴き比べてみようと思う。

一番好きなのは2009リマスター

結論から言ってしまうと、あえて好きな順位付けをするならば、
①2009リマスター
②レコード
③50周年リミックス
となる。50周年リミックスは最下位、というのが僕の感想だ。
その理由について50周年リミックスを中心に語っていきたいと思う。

今まで聴こえなかった音が聴ける50周年リミックス

まずは50周年リミックスの「賛」の部分。
とにかく音がクリアで、これまでの盤では聞こえなかった音がはっきり聴こえるようになった。作り手の立場からすれば、どんなに小さな音であっても何かしらの意図があって入れている音であろう。50周年リミックスではその一つひとつがクリアに聴こえて、長年Abbey roadを聴いてきた世代にとってはは嬉しい発見もあったのではなだろうか。

例えば、「Maxwell’s Silver Hammer」では、ヴォーカルのポールが歌の途中でわずかな吹き出し笑いが生々しく入っているし、「Here Comes The Sun」の終わりの部分のハンドクラップがはっきりと聴こえる。以前のバージョンではハンドクラップとは気づかずに聴き流していた。こんな風に、何気なく聴き流してきた音への気づきが得られる仕上がりとなっていることは嬉しいことではある。

音の「意味」を変えてしまった50周年リミックス

では、「否」の部分はどうか。
その聴き流してきた音が逐一耳に引っかかり、聴き終えた後に若干の疲労感を覚えたことだ。ビートルズ作品を聴いて疲労感を覚えたことなどこれまでなかったことだ。どうやらこの50周年リミックスは、これまでのものとは作品の印象がまるで違う作品になってしまったようである。この感じをどう表現するのが適切なのかはわからないが、出汁が効いた中華そばが好評なラーメン屋が、開店50周年を機にいきなりG系のラーメンを出すようになったというか、聴かせようとする(支持されようとする)ターゲットが変わってしまったような感じがする。

例えば、「Oh! Darling」の歌い出しでバンドが一斉に音を出すところと、「I Want You」のエンディングのリフレイン。なんか音が軽い。クリアになった音が悪い方向に作用しているようで、まるで各パートが別々の部屋で演奏しているようだ。

あと、「Come Together」など、ヴォーカルの随所に強いエコーがかかるのは果たして必要なのだろうか・・・。

失われた音の重層感

50周年リミックスと、オリジナル盤の間で何が決定的に違っていたのか。それは「音の重層感」である。オリジナル盤には、「Oh! Darling」の歌い出しではバンドの音に「重さ」を感じたし、「I Want You」もそうだ。

この重層感作っている要素はなんだろう。それは「聴こえない音」と「低音」にあるのではないだろうか。

50周年リミックスは、一つひとつの音が独立していてはっきり聴こえるが、独立しているが故に各パートの音が響き合わず、音が重なっている感じがしない。繰り返すが、各パートが別の部屋で演奏しているのを聴いている感じがする。

反面、オリジナル盤は、8トラックレコーダーを駆使してピンポン録音で音を重ねた結果、「聴こえない音」もメイン楽器との音に重なり、混ざることによって、同じ空間でバンドが演奏しているように聴こえる。

また50周年リミックスは、各パートの音を前に出すことに注力したせいか、低音に迫力を感じなくなっている。ベースやバスドラムが単体で鳴ってしまっているために、本来、高音の楽器に迫力をつけるはずが、機能していない。

以上、まとめると以下のようになる。
①2009リマスター
 ・・・オリジナルの音源をそのままキレイにしているので○
②レコード
 ・・・オリジナルなので当然○
 たまに入るノイズもまた良い
③50周年リミックス
 ・・・音はクリアに聴こえるが、軽いため△

最近、デジタルの音に疲れてしまったとかなんとかで、レコードとカセットテープのユーザーが増えているらしい。これには僕も同感だ。なんでも聴こえればいいというものでもない。

さすがにレコードを聴くとなれば、プレーヤーもいるし、アンプもいる。機種によってはフォノイコライザーも必要になるのでよっぽどの物好きにしかできないが、Apple musicには50周年エディションと2009年リマスターの両方が収録されているのでぜひ聴き比べてみてもらいたい。世代によって意見が分かれるかもしれない。


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