収録曲
1.Sunday Park
2.Mama’s alright
3.She don’t care
4.Swallowtail Butterfly ~あいのうた~
5.上海 ベイベ
6.してよ してよ
7.小さな手のひら
8.My way
概要
1996年9月16日発売。
映画『スワロウテイル』で、CHARA演じるグリコが結成する架空の無国籍バンド「YEN TOWN BAND」のデビューアルバムである。
音楽プロデュース&アレンジは、MY LITTLE LOVERの小林武史が担当。
感想
1990年代小林サウンドの決定版と言える。
小林武史のアレンジは年代ごとに特徴がある。強引に切り分けると、1990年台の「POP期」、2000年台の「サイケ期」、2010年台の「弦楽器期」に分けられる。
1990年台のPOP期は、初頭のサザンオールスターズに始まり、中期のMr.Children、My Little Loverのように、シンセサイザー・ドラム・ベース・ギターの音が多用されていたことが特徴的だった。今にしてみれば、CDメガヒットの時代により多くのリスナーに届くような軽い、ポップな音作りをしていたのではないだろうか。
2000年台は、リリィシュシュのような、歪んだエフェクトなどを使ったサイケな一面も見せ、2010年台にはピアノとストリングスに回帰している。
小林武史の音楽にはクラシックにルーツがあるからか、特定のパートが目立つように音量を上げたりせず、全てのパートの音が混ざりあい、各パートの音の輪郭がボヤけさせながら、一つの音(楽)として聴かせている。その「美学」はどの時代でもブレずに貫かれている。なんだか、上品なポップスを聞いているような感覚がある。
そしてYEN TOWN BANDはというと、90年台の「POP期」に、ロックバンドのサウンドをクラシック的に、各パートが混ざりあった一つの音にアレンジしていた90年台の決定版といえる。この音を聴くことで「ああ、90年台の小林サウンドだな」と思うことができるのである。
その音は、当時よく聴かれていたロックバンドとは一線を画すものであり、派手というよりも深みが感じられる一枚となっている。
映画の登場人物がリアルな世界で楽曲をリリースするという試みは当時としては例のなかったことであり、この事例を皮切りに日本の音楽シーンでは映画とのタイアップと同時に登場人物によるCDリリースが後に続き、やがてアニソン(マクロスや放課後ティータイム)に繋がっていった。
一時期と比べて今は、J-POPが世界基準でも注目されているのだから、映画の中で「無国籍バンド」と謳って、独特なバンドサウンドを展開、「Swallowtail Butterfly ~あいのうた~」以外は英語詩で歌われている本作は、世界でもっと評価されるべきだと思う。
あるいは一時期のシティポップのように、ひょんなことがきっかけで世界で日の目を見ることがあるのだろうか。そんなことを思っていたり。いなかったり。