ユニコーンニューアルバム「あたえてこ」ナルハヤレビュー

CD

こんなに「因む」バンドを僕は知らない

「あたえてこ」というアルバムのタイトルは、メンバーの名前の頭文字(「あ」べどん・「た」みお・「え」び・「て」しま・「こ」ういち)を並べて一つの語句のしたもの。また、ユニコーンは1993年発表のアルバム「SPRING MAN」の1曲目「与える男」がフリになっていることをそれとなく匂わせている。
しかも、「あたえてこ」を提げて敢行されるツアータイトルは「こえてたあ」と、言葉遊びにセンスを感じる。
さらに今作は、メンバー全員が還暦を超えてから初のアルバム。真紅のジャケッに、収録曲のタイトル、または歌詞の中に「クレナイ」「紅」「くれない(〜してくれない)」といった言葉がそこかしこに散りばめられている。
ユニコーンは、アルバムを制作するときに一つの共通のお題を決めてメンバーたちがそれぞれ作曲し、でもテープを持ち寄るところから始まる。前作「クロスロード」も「交差点」というテーマをもとに制作された11曲だった。
毎回、才能と個性が強い5人が協調して一つの作品を作っていることはファンとして嬉しい。
今回はそんな「あたえてこ」を1〜2回聴いた程度の状態で感想を記録していく。

各収録曲感想

1. クレナイノハ
PVが動画で先行公開された曲が1曲目とあり、「オープニングでのサプライズは無しか」というのが第一印象だったが、聴き始めて2分ぐらい経過した間奏のあたりで、そのがっかりが消えたほどにいい曲だった。
作詞・作曲:ABEDON、ヴォーカル:奥田民生は往年の黄金パターン。過去には「デジタルスープ」を生み出している。この2人の共作は「ライジングボール」や「スターな男」も好きだな。
伴奏しているヴァイオリンのクレジットに金原千恵子・沖祥子という名前があった。サザンやミスチルのサポートメンバーで見たことがあるゴージャスな1曲。

2. 夜の星流れ
イントロがかっこいい。民生ソロの「スルドクサイナラ」を彷彿とさせるギターリフ。ソロでのアプローチをユニコーンにもトレースする試行が見られて面白い。
この曲でアルバム全体への期待感が増してきた。

3. Beat It いいジイ
ビートを刻むコンコンいう音は最初は木魚だと思っていたが、実はカウベルだったようだ。このコンコン音が間抜けだなぁと思ったら、ストーンズをインスパイアしているという(笑)。曲のタイトルと歌詞が相まって、ストーンズっぽいというよりはユニコーンらしいコミックソングになっているところがすごい。

4. まねしてみようかと
三味線のイントロで始まる。
今回のアルバム、奥田民生が大活躍だな。4曲目でもう2曲歌っている。
歌詞の文脈は1993年のアルバム「SPRING MAN」の「あやかりたい’65」を令和に書き直した感じがする。ロックを日本でやることへの熱が滲み出ている。

5. クッキンGood
今回のアルバム、ABEDONも大活躍だ。オープニングから民生とABEDONが交互に出てくる。
「風と太陽」と雰囲気が似ている。
日常のなんてことない歌詞だが曲が進むにつれアレンジの音数が増えていって壮大になっていっている。

6. ナルハヤヤリナハレ
アルバム中盤にふさわしい中休み曲という感じ。
と思いきや、EBIの作曲に乗ってメンバー全員が順番に1節ずつヴォーカルを取る。そして歌詞は意外と真面目な人生論だった。
これぐらい脱力感がある方が不思議と言葉に説得力がある。
アレンジがカウベルとギターとドラムスケース(ってなんだ?)のみ。
過去にユニコーンはダンボール箱を打楽器にし、粒ガムが入った容器を振ってマラカスにしていたことがあり、この曲をライブで演奏している絵が見たくなった。

7. シャルドネな夜
アルバム中盤で満を持して川西登場。
ジェーン・バーキン風フレンチポップに川西の独特の音程と節回しが異様にマッチしている。
オブラートなしで言うと「音痴」と言われてしまうヴォーカルの活かし方のセンスw

8. チャンスじゃん
キーボードで始まる最初の一音目で「ヒゲとボイン」かと思ってしまった。
「じゃん」と「JUMP」がかかってる。元ネタがヴァンヘーレンだとすぐにわかった。
パロディーとされる曲はこれまでもたくさんあったが(それこそ「ヒゲとボイン」はELOのパロディー)、モノマネをしているわけでなく、ちゃんと自分たちの曲になっているのがすごい。

9. 紅の太陽
満を持してEBI登場。
アルバム終盤の登場は「SPRING MAN」以来。今回のアルバム、やたら「SPRING MAN」がよぎってくる(この後のエンディングでもそれが起きる)。

10. 誰もくれない
満を持してテッシー登場。
この曲のタイトルにも紅が入っている。
初めて聴いた時はこの時点で、今回もメンバー全員でテーマを統一させさせてデモテープを持ち寄って作られたアルバムなんだなと気づく。

11. Grand Tour
「バン」と「バ」という音を歌詞に巧みに盛り込み、口でビートを刻んでいる。さすがドラマー。過去には「半世紀少年」などでヒップホップにも挑戦しており、リズムに関してのエキスパートであることを見せつけてくれる。

12. セミフリー
ぱっと聴き、ビートルズの「SHE SAID」に似ていると思った。奥田民生のフェイバリットナンバーの一つだと前に語っていたと記憶している。たまに奥田民生はギターの音を歪ませたりディレイさせたりして、こういうテイストのサイケを作る。過去にも「雪が降る街」をレゲエとサイケをミクスチャーしたようなアレンジで演奏したことがある。歌詞の響きも相まって洋楽っぽいかっこよさ。
と、思ったら、イントロから聴こえていた歪み系ギターだと思っていた音が、実はメンバーが「ミーンミンミン」と鳴く肉声を歪めたものだった。
どこまでも三枚目路線を貫いてくれる。

13. FUJIYAMA
エンディングのヴォーカルには意外にもEBIが起用される。
さっきも言ったけど、「SPRING MAN」の時も「8月の」という曲でヴォーカルをとっている。
結果として前回の解散前のアルバムとなった「SPRING MAN」の時はどこかバンドの終末感、哀愁みたいなものを感じたが、今回はすごく前向きな曲でエンディングを迎える。
改めて、この5人が奏でる音を噛み締める。

結局どんなアルバムなのか?

名作になる予感がしている。
でも、最近はCDのようなフィジカルメディアも減って、なんとなくヘビーローテションする習慣がなく次々と消費されていく中で、ミュージシャンも記憶に残る名盤を生み出しにくい環境になってきていると思うが、過去の作品に匹敵するぐらい、確かにいいものであると言える。

合わせて聴きたいアルバム

SPRINGMAN

「与える」というキーワードといい、それぞれのメンバーの登場タイミングといい、なぜかやたらこのアルバムが頭をよぎった。「SPRINGMAN」の制作中に川西幸一が脱退してしまっただけに、「あたえてこ」では川西も含むメンバー5人で、同じ「与える」をキーワードにしたアルバムになったことがエモい。

シャンブル

メンバー全員が40代に突入し、2009年にまさかの再結成を遂げた時の最初のアルバム。

ゅ 13-14

メンバー全員が50代に突入した直後のアルバム。

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