名盤ライブ「30/奥田民生」@LINE CUBE SHIBUYA

レコード

5月の発売だというのに、観るのと感想を書くのにずいぶん時間がかかってしまいました。もはやタイムリーではありませんが、感想を散文的に書き綴っていきます。

これぞ初期OTサウンド

僕は、2000年の「GOLDBLEND」から2002年ごろの「E」までの期間はGOZを、2005年のミニアルバム「comp」を提げて行われたライブ以降はMTR&Yで、奥田民生のライブに触れてきました。

GOZとMTR&Yを比較すると、同じ楽曲を演奏すること一つを取り上げるにしても、バンドメンバーが違えば、こうも音が違うのかと感心させられます(当たり前のことを言うようですが)。

MTR&Yはヴォーカル&ギター、ベース、ドラム、キーボードの4人編成のため、GOZ期の楽曲を演奏するときはギタリストがマイナス1名となり、音に隙間が生まれます。

また、アルバム「サボテンミュージアム」に収録の「MTRY」という曲の歌詞の中で「ちょっぴりずれている」とを自認している通り、ちょっぴりずれた演奏が特徴です。MTR&Yは、音の「隙間」と「ずれ」を肯定することで独特のグルーブを楽しむことができるバンドです。

一方、今回の映像で見たGOZは、曲の出だしのタイミングや、「103」の時のように曲の途中で全員が一瞬、音をミュートさせるところ、「つくば山」でアウトロで機材を一切使わずに人力でフェードアウトしたり、その逆に「それはなにかとたずねたら」でフェードインもする芸の細かさや、曲の締めでピタッと音を止めるところなど、5人のメンバーが一心同体であるかのように息がぴったり合っていて、CDと遜色ない音を生演奏で再現していました。GOZというバンドをしばらく見ていなかったので忘れてましたが、そういえばそういうバンドでしたね。懐かしいです。

邪推ですが、1993年の解散前のユニコーンが息ぴったりの代表格と言えるバンドで、ユニコーンと同じレギュレーションをGOZにトレースしたのではなかろうか、と思います。MTR&Yと比べてどちらかというとユニコーンに近い雰囲気を感じます。

OTのセンスをもっと知ってもらいたい

今(2026年)、改めて全曲通して聴いてみると、初めてこのアルバムを聴いた時とはまた違った凄さを味わえます。単に僕が歳を取っただけだからかもしれませんが、いい音楽とは、「時代を超えて長く聴ける」、もっというと「聴くたびに新しい発見がある」ことにあると思っています。今回の名盤ライブにもそれを感じることができました。

アルバム「30」は、1995年当時のJ-POPとしても、奥田民生作品としても、この時期の奥田民生にしか作れない異色なアルバムだと思います。

なにが異色なのか。

それはオープニング曲として「人間2」に始まり、(ボーナストラックの「Sunny」を除いて)「厳しいのである」で終わるようなところです。内省的で暗いトーンのオープニングとエンディングで構成されています。

90年代なんて、メガヒットの時代の真っ只中で、今よりもっと明るくて、もっと浮かれた雰囲気で、もっとキラキラしていた時期だったような気がします。しかも30歳という年齢は、まだ元気で勢いがありそうなものですが、そんな中での、OTの不安と葛藤が、妙なリアリティを持ってありありと記録されています。

「30」以降のOTの歌詞の世界は悟りの境地に入っていき、メガヒットの時代が終わっていくにつれ、むしろOTは力強く元気な楽曲が増えていくので、その過渡期となる瞬間が詰まったアルバムは当時の記録として貴重であるとともに、とことんOTは時代の空気感に対して逆張りで異端的だと思います。

奥田民生の魅力が語られる時、よく「ユルさ」や「だるさ」、「マイペース」という評価が散見されますが、こういう逆張りで異端的だが、納得や感心が得られるエッジの効いたセンスを見せつけてくるところももっと知ってもらいたいところです。

アンコールは「30」以後のダイジェストという感じ

「30」がエンディングを迎えると、ちょうど1時間経過、ということになりますが、ライブとしてはまだまだ物足りないところ。

期待通りアンコールがありました。

セットリストは、アルバム「GOLDBLEND」の時期周辺の曲が多めの選曲です。まさにGOZ黄金期の楽曲。「細胞」だけはMTR&Yの時の曲です。
前回の「59-60」の時は「風は西から」「無限の風」などGOZ以降の楽曲もやっていました。「細胞」の時のリードギター長田さんはアコギでコードをなぞることに徹していたように見えたので、ライブの流れで選曲しただけのかもしれません。会場によっては「青春」も披露したとのこと。なぜBDに収録しなかった(怒)。リリースの時系列で見ると「青春」はGOZ体制のラストナンバーなので、ライブで演奏しているところを見てみたかったです。

「それはなにかとたずねたら」が久しぶりに聴けたのはよかったです。前述の「悟りの境地に入った歌詞」というのがまさにこの曲で、20代で「素晴らしい日々」、30代前半で「それはなにかとたずねたら」の歌詞が書けてしまうOTの才能に畏れを覚えます。どちらも今の僕よりはるかに若い時の歌詞です。その達観していてそれでいて普遍的な歌詞はいつ聴いても感心します。この凄さも世の中にあまり伝わっていないような気がします。

まとめ

そうこう言っているうちに終わりました。見所としてまとまると、次のような感じになるかと思います。

・令和版としてブラッシュアップされた初期のOTサウンドが楽しめる。
・「30」というアルバムの異端さが再確認できる。
・アンコールでは最近演奏されなかった隠れ名曲が堪能できる。

といったところでしょうか。

少し残念と思った点としては、このメンバーでの「御免ライダー」が久しぶりに聴きたかった、という点と、およそ2時間の公演時間であれば、「29」「30」をつなげたセットリストでもよかったのかな、と思った点です。

本作はどちらかというと、コアな奥田民生ファンが喜ぶ内容になっているので、最近、奥田民生を聴くようになった、という人には前作の両国国技館のBDの方がおすすめです。

他の作品の30周年記念も期待していい?

言い出すとキリがないですが、「failbox」、「股旅」の30周年記念ライブなんてものは期待してもいいものなんでしょうか・・・。

海外でも、ビートルズがオリジナルアルバムを50周年記念で再発売したり、U2が2017年に「ヨシュア・トゥリー」の30周年記念で再現(を大きく超越した)ライブを行ったりと、ご長寿アーティストの周年記念ムーブは増えています。
国内でも今回のOTのように、周年を大いに盛り上げてもらって、僕らミドル世代の「あの頃」の追体験にぜひ一役買っていただきたいところです。

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